第二十八話

「アハハハハ。」

「見たかよアイツ、なっさけねー顔!」

「あれじゃ到底競馬も勝てないよね。」

「ていうか、勝つもなにもそもそも馬券を買うお金ないんじゃないの?」

「アハハハハハハハ。」

三人が完全に自由を手にした瞬間だった。

「どうせならこのまま終点まで行っちゃおうよ。」

博史の言葉に二人も同意して三人は終点の風見ヶ崎まで行くことにした。

 駅を通過するにつれ、あたりの風景はごちゃごちゃとした繁華街から疎らな古い家並みに変わり、田畑や林が増えてきた。
線路の前方にそびえる山には真っ白に雪が積もり、雪に朝日が反射して窓の外一面が眩しいくらいに輝いていた。

乗客も駅に停車する度にどんどん人数が減り、今はもう同じ車両には5~6人が座っているだけだ。
ここまでくればもうタンザキを心配することもない。


「なあ由佳、金庫の中見たか?」

信一が聞いた。

「ううん、まだ見てない...。」

言いながら由佳はすぐにバッグを開け金庫を取り出した。

「...これ、カギが掛かってるのよ。」

金庫の前面には丸いダイアル型の鍵が付いていて0から9までの数字が書いてある。クルクルと適当に回して開錠レバーをカチャカチャしてみるが一向に開く気配はない。
そんなに頑丈そうでもないから何かに叩きつけて金庫を壊し、無理矢理開けることはできそうだが電車内では無理だ。

「電車を降りてからどこかで壊して開けようよ。」

博史が言った。

「いくらあるかな...。」

信一がニヤリとした。

「私が見た時はかなりあったわよ。」

由佳もニヤリ笑った。

博史が金庫を上下に振ると中身が動いてバサバサ音がする。もしこの中身が全部紙幣だとしたなら、かなりありそうな感じだった。